○長与町情報公開条例に基づく処分に係る審査基準

令和6年8月30日

策定

長与町情報公開条例(平成13年条例第17号。以下「情報公開条例」という。)に基づき、実施機関(情報公開条例第2条第1号に規定する「実施機関」をいう。以下同じ。)が行う処分に係る長与町行政手続条例(平成8年条例第5号)第5条第1項の規定により審査基準は、次のとおりとする。

第1 開示決定等の審査基準

情報公開条例第11条の規定に基づく開示又は非開示の決定(以下「開示決定等」という。)は、以下により行う。

1 開示する旨の決定(情報公開条例第11条第1項)は、次のいずれかに該当する場合に行う。

(1) 開示請求に係る公文書に非開示情報が記録されていない場合

(2) 開示請求に係る公文書の一部に非開示情報が記録されている場合であって、当該非開示情報が記録されている部分を容易に区分して除くことができるとき。ただし、この場合には、非開示情報が記録されている部分を除いて開示する。

(3) 開示請求に係る公文書に非開示情報が記録されている場合であっても、公益上特に当該公文書を開示する必要があるとき。(情報公開条例第9条)

2 開示しない旨の決定(情報公開条例第11条第2項)は、次のいずれかに該当する場合に行う。

(1) 公文書開示請求書に情報公開条例第6条第1項各号に規定する事項の記載の不備がある場合又は開示請求手数料が納付されていない場合。ただし、当該不備を補正することができると認められる場合は、原則として、開示請求者に補正を求めるものとする。

(2) 開示請求に係る公文書を実施機関において保有していない場合(開示請求の対象が情報公開条例第2条第2号に規定する公文書に該当しない場合及び開示請求の対象が情報公開条例以外の条例における適用除外規定により、開示請求の対象外のものである場合を含む。)

(3) 開示請求に係る公文書に記録されている情報が全て非開示情報に該当する場合

(4) 開示請求に係る公文書の一部に非開示情報が記録されている場合であって、当該非開示情報が記録されている部分と他の部分とを容易に区分して除くことができないとき。

(5) 開示請求に係る公文書の存在の有無を明らかにするだけで、非開示情報を開示することになる場合(情報公開条例第10条)

(6) 開示請求が権利濫用に当たる場合。この場合において、権利濫用に当たるか否かの判断は、開示請求の態様、開示請求に応じた場合の実施機関の業務への支障及び住民一般の被る不利益等を勘案し、社会通念上妥当と認められる範囲を超えるものであるか否かを個別に判断して行う。実施機関の事務を混乱又は停滞させることを目的とする等開示請求権の本来の目的を著しく逸脱する開示請求は、権利の濫用に当たる。

3 前2項の判断に当たっては、公文書に該当するかどうかの判断は「第2 公文書該当性に関する判断基準」に、開示請求に係る公文書に記録されている情報が非開示情報に該当するかどうかの判断は「第3 非開示情報該当性に関する判断基準」に、部分開示をすべき場合に該当するかどうかの判断は「第4 部分開示に関する判断基準」に、公益上の理由による裁量的開示を行うかどうかの判断は「第5 公益上の理由による裁量的開示に関する判断基準」に、公文書の存否を明らかにしないで開示請求を拒否すべき場合に該当するかどうかの判断は「第6 公文書の存否に関する情報に関する判断基準」に、それぞれよる。

第2 公文書該当性に関する判断基準

開示請求の対象が情報公開条例第2条第2号に規定する公文書に該当するかどうかの判断は、以下の基準により行う。

1 「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した」とは、実施機関の職員が当該職員に割り当てられた仕事を遂行する立場で、すなわち公的立場において作成し、又は取得したことをいい、作成したこと又は取得したことについて、文書管理のための帳簿に記載すること、収受印があること等の手続的な要件を満たすことを必要とするものではない。

2 「文書、図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。」とは、実施機関において、現に事務又は事業で用いられている記録の形式を網羅するものである。

「文書、図画」とは、人の思想等を文字若しくは記号又は象形を用いて有体物に可視的状態で表現したものをいい、紙の文書のほか、図面、写真、これらを写したマイクロフィルム等が含まれる。

「電磁的記録」とは、電子計算機による情報処理の用に供されるいわゆる電子情報の記録に限られず、録音テープ、ビデオテープ等の内容の確認に再生用の専用機器を用いる必要のある記録も含まれる。また、電子計算機による情報処理のためのプログラムについても、電磁的記録に該当する。

なお、「電磁的記録」には、ディスプレイに情報を表示するために一時的にメモリに蓄積される情報、ハードディスク上に一時的に生成されるテンポラリファイル等は含まれない。

3 「当該実施機関の職員が組織的に用いるもの」とは、作成又は取得に関与した職員個人の段階のものではなく、組織としての共用文書の実質を備えた状態、すなわち、当該実施機関の組織において、業務上必要なものとして、利用又は保存されている状態のものを意味する。

したがって、①職員が単独で作成し、又は取得した文書、図画又は電磁的記録であって、専ら自己の職務の遂行の便宜のためにのみ利用し、組織としての利用を予定していないもの(自己研さんのための研究資料、備忘録等)、②職員が自己の職務の遂行の便宜のために利用する正式文書と重複する当該文書の写し、③職員の個人的な検討段階に留まるもの(決裁文書の起案前の職員の検討段階の文書、図画又は電磁的記録等。ただし、担当職員が原案の検討過程で作成する文書、図画又は又は電磁的記録であっても、組織において業務上必要なものとして保存されているものは除く。)等は、「組織的に用いるもの」には該当しない。

作成又は取得された文書、図面又は電磁的記録が組織的に用いるもの当たるかどうかの判断は、①作成又は取得の状況(職員個人の便宜のためにのみ作成又は取得するものであるかどうか、直接的又は間接的に当該実施機関の長等の管理監督者の指示等の関与があったものであるかどうか)、②利用の状況(業務上必要として他の職員又は部外に配付されたものであるかどうか、他の職員がその職務上利用しているものであるかどうか)、③保存又は廃棄の状況(専ら当該職員の判断で処理できる性質のものであるかどうか、組織として管理している職員共用の保存場所で保存されているものであるかどうか)などを総合的に考慮して行う。

また、組織として共用文書たる実質を備えた状態になる時点については、当該組織における文書、図画又は電磁的記録の利用又は保存の実態により判断するものであるが、例えば、①決裁を要するものについては起案文書が作成され、りん議に付された時点、②会議に提出した時点、③申請書等が実施機関の事務所に到達した時点、④組織として管理している職員共用の保存場所に保存した時点等が挙げられる。

4 「保有している」とは、所持すなわち物を事実上支配している状態を意味する。文書、図画又は電磁的記録を書庫等で保管し、又は倉庫業者等に保管させている場合であっても、当該文書、図画又は電磁的記録を事実上支配(当該文書、図画又は電磁的記録の作成、保存、閲覧・提供、移管・廃棄等の取扱いを判断する権限を有していることを意味する。例えば、法律に基づく調査権限により関係人に対し帳簿書類を提出させこれを留め置く場合に、当該公文書については返還することとなり、廃棄はできないなど、法令等の定めにより取扱いを判断する権限について制限されることはあり得る。)していれば、所持に該当し、「保有している」に該当する。

なお、一時的に文書を借用し、又は預かっている場合等、当該文書、図画又は電磁的記録を支配していると認められない場合は、「保有している」に当たらない。

5 「町の刊行物、新聞、雑誌、書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として発行されるもの」(情報公開条例第2条第2号ア)とは、紙媒体のものに限られるものではなく、インターネット上で不特定多数の者への有償頒布を目的として発行される新聞、雑誌、書籍等も含まれる。

なお、実施機関が公表資料等の情報提供を行っているものについては、情報公開条例第2条第2号アに該当せず、開示請求の対象となる。

第3 非開示情報該当性に関する判断基準

開示請求に係る公文書に記録されている情報が非開示情報に該当するかどうかの判断は、以下の基準により行う。

1 法令又は他の条例の規定により公にすることができない情報(情報公開条例第7条第1号)についての判断基準

(1) 「法令又は条例」とは、法律、政令、府令、省令等の国法と他の条例のほか、これらの規定により非開示とすべき事項を委任されている規則等(訓令を除く。)を含むものである。

(2) 「明らかに公にすることができないとされているもの」とは、具体的には次のような類型の情報が挙げられる。

ア 明文の規定をもって閲覧等が禁止されている情報

イ 他の目的での使用が禁止されている情報

ウ 個別の法令等の明文により守秘義務が課せられている情報

エ 関係人以外には閲覧等が禁止されている情報

オ その他法令等の趣旨、目的等から判断して、開示することができないと認められる情報

2 個人に関する情報(情報公開条例第7条第2号)についての判断基準

(1) 特定の個人を識別することができる情報等(情報公開条例第7条第2号本文)について

ア 「個人に関する情報」とは、個人(死亡した者を含む。)の内心、身体、身分、地位、経歴その他個人に関する一切の事項についての事実、判断、評価等の全ての情報を含むものであり、個人に関連する情報全般を意味する。したがって、個人の属性、人格及び私生活に関する情報に限らず、個人の知的創作物に関する情報、組織体の構成員としての個人の活動に関する情報も含まれる。

また、非開示情報該当性の判断に当たっては、開示請求者が誰であるかは考慮しないことから、開示請求者本人に関する情報であっても、他の個人に関する情報と同様に取り扱う。

ただし、事業を営む個人の当該事業に関する情報は、情報公開条例第7条第3号の規定により判断する。

イ 特定の個人を識別することができる情報は、通常、特定の個人を識別させる部分(例えば、個人の氏名)とその他の部分(例えば、当該個人の行動の記録)とから成り立っており、その全体が一つの非開示情報を構成するものである。

ただし、情報公開条例第8条第2項の規定により、氏名、生年月日その他の特定の個人を識別することができる記述等の部分を除くことにより、公にしても、個人の権利利益が害されるおそれがないと認められる場合には、当該部分以外の部分は情報公開条例第7条第2号の情報に含まれないものとみなして、情報公開条例第8条第1項の規定(部分開示)を適用することに留意する。

ウ 個人に関する情報の記述としては、住所、電話番号、役職名、個人別に付された記号・番号(振込口座番号、試験の受験番号、保険証の記号番号等)等も含まれる。氏名以外の記述等単独では特定の個人を識別することができない場合であっても、当該情報に含まれるいくつかの記述等が組み合わされることにより特定の個人を識別することができる場合は「特定の個人を識別することができる」に該当する。

エ 当該情報単独では特定の個人を識別することができないものであっても、他の情報と照合することにより特定の個人を識別することができる情報には、情報公開条例第7条第2号の規定が適用される。照合の対象となる「他の情報」としては、公知の情報、図書館等の公共施設で一般に入手可能な情報など一般人が通常入手し得る情報が含まれる。また、当該個人の近親者、地域住民等であれば保有しているか又は入手可能であると通常考えられる情報も含む。他方、特別の調査をすれば入手し得るかもしれないと考えられる情報については、一般的には、「他の情報」に含まれない。照合の対象となる「他の情報」の範囲については、当該個人に関する情報の性質、内容等に応じ、個別に判断する。

オ 厳密には特定の個人を識別することができる情報でない場合であっても、特定の集団に属する者に関する情報を開示すると、当該集団に属する個々人に不利益を及ぼすおそれがある場合には、当該情報の性質、集団の性格又は規模等により、個人の権利利益の十全な保護を図る観点から、個人識別性を認めるべき場合があり得ることに留意する。

カ 「公にすることにより、明らかに個人の権利利益を害するおそれがあるもの」には、匿名の作文、無記名の個人の著作物等、個人の人格と密接に関連するもの及び公にすれば財産権その他の個人の正当な利益を害するおそれがあると認められるものが含まれる。

(2) 法令等の規定により公にされている情報等(情報公開条例第7条第2号ア)について

ア 「法令等の規定」とは、何人に対しても等しく当該情報を公開することを定めている規定に限られる。したがって、公開を求める者又は公開を求める理由によって公開を拒否する場合が定められている規定は含まれない。

イ 「慣行として」とは、公にすることが慣習として行われていることを意味するが、慣習法としての法規範的な根拠を要するものではなく、事実上の慣習として公にされていること又は公にすることが予定されていることで足りる。ただし、当該情報と同種の情報が公にされた事例があったとしても、それが個別的な事例にとどまる限り、「慣行として」には当たらない。

ウ 「公にされ」とは、当該情報が現に公衆が知り得る状態に置かれていれば足り、現に周知の事実であるかどうかは問わない。ただし、過去に公にされた情報について、時の経過により、開示決定等の時点では「公にされ」に当たらない場合があることに留意する。

エ 「公にすることが予定されている情報」とは、将来的に公にする予定(具体的に公表が予定されている場合に限らず、求めがあれば何人にも提供することを予定しているものを含む。)の下に保有されている情報をいう。ある情報と同種の情報が公にされている場合であって、当該情報のみ公にしないとする合理的な理由がない場合等、当該情報の性質上通例公にされるものも含まれる。

(3) 人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報(情報公開条例第7条第2号イ)について

個人に関する情報を公にすることにより害されるおそれがある当該個人の権利利益よりも、当該情報を公にすることにより人の生命、健康、生活又は財産を保護する必要性が上回ると認められる場合には、当該情報は開示する。現実に、人の生命、健康、生活又は財産に被害が発生している場合に限らず、将来これらが侵害される蓋然性が高い場合も含まれる。

この比較衡量に当たっては、個人の権利利益には様々なものがあり、また、人の生命、健康、生活又は財産の保護についても、保護すべき権利利益の程度に差があることから、個別の事案に応じた慎重な検討を行うものとする。

(4) 公務員に関する情報(情報公開条例第7条第2号ウ)の取扱いについて

ア 公務員に関する情報も個人に関する情報に含まれるが、このうち、公務員の職務遂行に係る情報については、当該情報のうち、当該公務員の職及び当該職務遂行の内容に係る部分については、個人に関する情報としては非開示情報に当たらない。

なお、公務員の職務遂行に係る情報が職務遂行の相手方等公務員以外の個人に関する情報でもある場合には、各個人ごとに非開示情報該当性を判断する。すなわち、当該公務員にとっての非開示情報該当性と他の個人にとっての非開示情報該当性とを別個に検討し、そのいずれかに該当すれば、当該部分は非開示とする。

イ 「公務員」とは、広く公務遂行を担任する者を含むものであり、一般職か特別職か、常勤か非常勤かを問わず、町の職員のほか、国及び他の地方公共団体の機関の職員、国務大臣、国会議員、裁判官等を含む。また、退職した者であっても、公務員であった当時の情報については、当該規定は適用される。

ウ 「職務の遂行に係る情報」とは、公務員が、実施機関又は国の機関若しくは他の地方公共団体の機関の一員として、その担任する職務を遂行する場合における当該活動についての情報を意味する。例えば、行政処分その他の公権力の行使に係る情報、職務としての会議への出席、発言その他の事実行為に係る情報等がこれに含まれる。

ただし、情報公開条例第7条第2号ウの規定は、具体的な職務の遂行との直接の関連を有する情報を対象とするものであるので、公務員に関する情報であっても、職員の人事管理上保有する健康情報、休暇情報等は、「職務の遂行に係る情報」には含まれない。

エ 各実施機関は、その所属する職員(補助的業務に従事する非常勤職員を除く。)の職務遂行に係る情報に含まれる当該職員の氏名については、特段の支障の生じるおそれがある場合(①氏名を公にすることにより、情報公開条例第7条第1号及び第3号から第7号までに掲げる非開示情報を公にすることとなるような場合、②氏名を公にすることにより、個人の権利利益を害することとなるような場合)を除き、公にするものとされている。このため、実施機関が公にするものとした職務遂行に係る公務員の氏名については、「慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」(情報公開条例第7条第2号ただし書ア)に該当することに留意する。

なお、人事異動情報の公表その他の実施機関により職名及び氏名を公表する慣行がある場合、実施機関により作成され、又は実施機関が公にする意思をもって(又は公にされることを前提に)提供した情報を基に作成されている場合にも、「慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」に該当する。

3 法人等又は事業を営む個人の当該事業に関する情報(情報公開条例第7条第3号)についての判断基準

(1) 法人その他の団体に関する情報及び事業を営む個人の当該事業に関する情報(情報公開条例第7条第3号本文)について

ア 「法人その他の団体」(以下「法人等」という。)には、株式会社等の商法上の会社、財団法人、社団法人、学校法人、宗教法人等の民間の法人のほか、政治団体、外国法人、権利能力なき社団等も含まれる。ただし、国及び地方公共団体は、情報公開条例第7条第3号の対象から除かれており、その事務又は事業に係る情報は、情報公開条例第7条第7号等の規定に基づき判断する。

イ 「法人その他の団体に関する情報」とは、法人等の組織及び事業に関する情報のほか、法人等の権利利益に関する情報等法人等と何らかの関連性を有する情報を意味する。なお、法人等の構成員に関する情報は、法人等に関する情報であると同時に、構成員各個人に関する情報でもあり、情報公開条例第7条第2号の非開示情報に当たるかどうかも検討する必要がある。

ウ 「事業を営む個人の当該事業に関する情報」は、事業に関する情報であるので、法人等に関する情報と同様の要件により、事業を営む上での正当な利益等について非開示情報該当性を判断する。

エ 「権利」とは、信教の自由、集会・結社の自由、学問の自由、財産権等法的保護に値する権利一切を指し、「競争上の地位」とは、法人等又は事業を営む個人の公正な競争関係における地位をいう。また、「その他正当な利益」には、ノウハウ、信用等法人等又は事業を営む個人の運営上の地位が広く含まれる。

オ 権利、競争上の地位その他正当な利益を「害すると客観的かつ明白に認められる」かどうかの判断に当たっては、法人等又は事業を営む個人には様々な種類、性格のものがあり、その権利利益にも様々のものがあるので、法人等又は事業を営む個人の性格、権利利益の内容及び性質等に応じ、当該法人等又は事業を営む個人の憲法上の権利(信教の自由、学問の自由等)の保護の必要性、当該法人等又は事業を営む個人と行政との関係等を十分考慮して適切に判断する必要があることに留意する。

なお、この「客観的かつ明白」の判断に当たっては、単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が求められる。

(2) 人の生命、身体若しくは健康又は財産若しくは生活を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報(情報公開条例第7条第3号ただし書ア~ウ)について

法人又は事業を営む個人の当該事業に関する情報を公にすることにより保護される人の生命、健康等の利益と、これを公にしないことにより保護される法人等又は事業を営む個人の権利利益とを比較衡量し、前者の利益を保護することの必要性が上回ると認められる場合は、当該情報は情報公開条例第7条第3号の非開示情報に該当しない。現実に人の生命、健康等に被害が発生している場合に限らず、将来これらが侵害される蓋然性が高い場合も含まれる。

なお、法人等又は事業を営む個人の事業活動と人の生命、健康等に対する危害等との明確な因果関係が確認されなくても、現実に人の生命、健康等に対する被害等の発生が予想される場合もあり得ることに留意する。

4 いわゆる任意提供情報(情報公開条例第7条第4号)について

(1) 情報公開条例第7条第4号は、個人又は法人等から公にしないとの条件の下に任意に提供された情報については、当該条件が合理的なものと認められる限り、非開示情報とすることにより、情報提供者の信頼と期待を基本的に保護するものである。

なお、行政機関の情報収集能力の保護は、情報公開条例第7条第7号等の規定によって判断する。

(2) 「実施機関の要請を受けて、公にしないとの条件で…任意に提出された情報」には、実施機関の要請を受けずに、個人又は法人等から提供された情報は含まれない。ただし、実施機関の要請を受けずに個人又は法人等から情報の提供を申し出た場合であっても、提供に先立ち、当該個人又は法人等から非公開の条件が提示され、実施機関が合理的理由があるとしてこれを受諾した上で提供を受けた場合は含まれる。

(3) 「実施機関の要請」には、法令等に基づく報告又は提出の命令は含まれないが、実施機関の長が報告徴収権限を有する場合であっても、当該権限を行使することなく、任意に提出を求めた場合は含まれる。

(4) 「公にしないとの条件」とは、情報の提供を受けた実施機関が第三者に対して当該情報を提供しないとの条件を意味する。また、特定の行政目的以外の目的には使用しないとの条件も含まれる。

(5) 「条件」については、実施機関の側から公にしないとの条件で情報の提供を申し入れた場合も、個人又は法人等の側から公にしないとの条件を付することを申し出た場合も含まれるが、いずれの場合も双方の合意により成立するものである。また、条件を設ける方法としては、黙示的なものも含まれる。

(6) 「個人又は法人等における通例として公にしないこととされているもの」とは、当該個人又は法人等の個別具体的な事情ではなく、当該個人又は法人等が属する業界等における通常の取扱いを意味し、当該個人又は法人等において公にしていないことだけでは足りない。

(7) 公にしないとの条件を付することの合理性の判断に当たっては、情報の性質に応じ、当該情報の提供当時の諸般の事情を考慮して判断するが、必要に応じ、その後の事情の変化も考慮する。公にしないとの条件が付されていても、現に当該情報が公にされている場合には、情報公開条例第7条第4号には該当しない。

5 公共の安全等に関する情報(情報公開条例第7条第5号)についての判断基準

(1) 「犯罪の予防」とは、犯罪の発生を未然に防止することをいう。したがって、住民の防犯意識の啓発、防犯資機材の普及等、一般に公にしても犯罪を誘発し、又は犯罪の実行を容易にするおそれがない防犯活動に関する情報は、含まれない。

犯罪の「捜査」とは、捜査機関が犯罪があると思料するときに、公訴の提起(検察官が裁判所に対し、特定の刑事事件について審判を求める意思表示をすることを内容とする訴訟行為をいう。)等のために犯人及び証拠を発見、収集又は保全することをいう。

(2) 「公共の安全と秩序の維持」とは、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持及び刑の執行に代表される刑事法の執行を中心としたものを意味する。刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)以外の特別法により、臨検、捜索、差押え、告発等が規定され、犯罪の予防・捜査とも関連し、刑事司法手続に準ずるものと考えられる犯則事件の調査、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号)違反の調査等や、犯罪の予防・捜査に密接に関連する破壊的団体(無差別大量殺人行為を行った団体を含む。)の規制、暴力団員による不当な行為の防止、つきまとい等の規制、強制退去手続に関する情報であって、公にすることにより、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあるものは、情報公開条例第7条第5号に含まれる。

また、公にすることにより、テロ等の人の生命、身体、財産等への不法な侵害や、特定の建造物又はシステムへの不法な侵入又は破壊を招くおそれがあるなど、犯罪を誘発し、又は犯罪の実行を容易にするおそれがある情報及び被疑者又は被告人の留置又は勾留に関する施設保安に支障を生ずるおそれのある情報も、情報公開条例第7条第5号に含まれる。

情報公開条例第7条第5号に該当する情報の具体例としては、情報システムの設計仕様書、構成図等情報セキュリティに関する情報、電子署名を行うために必要なかぎ情報等が挙げられる。一方、伝染病予防、食品、環境等の衛生監視、建築規制、災害警備等の一般に公にしても犯罪の予防、鎮圧等に支障が生じるおそれのない行政警察活動に関する情報については、情報公開条例第5条第6号の規定により判断する。

(3) 上記のほか、公訴の維持(提起された公訴の目的を達成するため、終局判決を得るまでに検察官が行う公判廷における主張及び立証、公判準備等の活動を指す。)及び刑の執行等(刑法(明治40年法律第45号)第2章に規定されている刑又は処分を具体的に実施することをいい、保護観察、勾留の執行、保護処分の執行、観護措置の執行、補導処分の執行及び監置の執行についても含む。)についても、公にすることにより保護観察等に支障を及ぼし、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある情報は、情報公開条例第7条第5号に該当する。

6 審議、検討等情報(情報公開条例第7条第6号)についての判断基準

(1) 「町の機関並びに国の機関及び他の地方公共団体の内部又は相互間」とは、実施機関並びに国会、内閣、裁判所及び会計検査院(これらに属する機関を含む。)並びに他の地方公共団体(以下「実施機関等」という。)について、それぞれの機関の内部又は他の機関との相互間を意味する。

(2) 「審議、検討又は協議に関する情報」とは、実施機関等としての意思決定に至るまでの過程の各段階において行われている様々な審議、検討及び協議に関連して作成され、又は取得された情報をいう。

(3) 「率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」とは、公にすることにより、外部からの圧力、干渉等の影響を受けることなどにより、率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある場合が想定されているものであり、適正な意思決定手続の確保を保護利益とするものである。

例えば、「率直な意見の交換が不当に損なわれるおそれ」には、審議、検討等の場における発言内容が公になることにより、発言者やその家族に対して危害が及ぶおそれが生じる場合が含まれる(この場合には、情報公開条例第7条第5号等の非開示情報に該当する可能性もある。)。また、「意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」には、実施機関内部における政策の検討が不十分な段階での情報が公になることにより、外部からの圧力によって当該政策に不当な影響を受けるおそれが生じる場合が含まれる。

(4) 「不当に町民の間に混乱を生じさせるおそれ」とは、未成熟な情報、事実関係の確認が不十分な情報等を公にすることにより、町民の誤解や憶測を招き、不当に町民の間に混乱を生じさせるおそれがある場合をいう。適正な意思決定を行うことそのものを保護するのではなく、情報が公にされることによる町民への不当な影響が生じないようにする趣旨である。

(5) 「特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれ」とは、尚早な時期に事実関係等の確認が不十分な情報等を公にすることにより、投機を助長するなどによって、特定の者に不当に利益を与え又は不利益を及ぼす場合が想定されており、事務及び事業の公正な遂行を図るとともに、国民への不当な影響が生じないようにする趣旨である。

例えば、施設等の建設計画の検討状況に関する情報が開示されることにより、土地の買占めが行われて地価が高騰し、開示を受けた者等が不当な利益を得るおそれがある場合や、違法行為の有無に関する事実関係の調査中の情報が開示されることにより、違法又は不当な行為を行っていない者が不利益を被るおそれがある場合が含まれる。

(6) 情報公開条例第7条第6号の「不当に」とは、審議、検討等途中の段階の情報を公にすることの公益性を考慮してもなお、適正な意思決定の確保等への支障が看過し得ない程度のものを意味する。予想される支障が「不当」なものかどうかの判断は、当該情報の性質に照らし、公にすることによる利益と非開示にすることによる利益とを比較衡量した上で判断する。

(7) 町の機関又は国の機関若しくは他の地方公共団体としての意思決定が行われた後は、審議、検討等に関する情報を公にしても、一般的には、「率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」が生じる可能性が少なくなるものと考えられることに留意する。ただし、当該意思決定が政策決定の一部の構成要素である場合、当該意思決定を前提として次の意思決定が行われる場合等審議、検討等の過程が重層的又は連続的な場合には、当該意思決定が行われた後であっても、政策全体の意思決定又は次の意思決定に関して情報公開条例第7条第6号に該当するかどうか判断する必要があることに留意する。

また、意思決定が行われた後であっても、審議、検討等に関する情報が公になることにより、不当に町民の間に混乱を生じさせるおそれがある場合、将来予定されている同種の審議、検討等に係る意思決定に不当な影響を与えるおそれがある場合は、情報公開条例第7条第6号に該当する。

なお、審議、検討等に関する情報であっても、当該情報が専門的な検討を経た調査データ等の客観的、科学的事実又はこれに基づく分析等を記録したものについては、一般的には、情報公開条例第7条第6号に該当する可能性が低いものと考えられることに留意する。

7 事務又は事業に関する情報(情報公開条例第7条第7号)についての判断基準

(1) 「公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務事業の性質上、当該事務事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」

ア 町の機関又は国の機関若しくは他の地方公共団体が行う事務又は事業は、公共の利益のために行われるものであり、公にすることによりその適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報は、非開示情報に該当する。なお、情報公開条例第7条第7号アからまでの規定は、各機関に共通的に見られる事務又は事業に関する情報であって、その性質上、公にすることにより、その適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると考えられる典型的な支障が挙げられているものであり、情報公開条例第7条第7号の規定の対象となる事務及び事業は、これらに限られない。

イ 「当該事務事業の性質上」とは、当該事務又は事業の本質的な性格、具体的には、当該事務又は事業の目的、その目的達成のための手法等に照らして、その適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるかどうかを判断するとの趣旨である。

ウ 「適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」とは、実施機関に広範な裁量権限が与えるものではなく、各規定の要件の該当性を客観的に判断する必要がある。また、事務若しくは事業の根拠となる規定又はその趣旨に照らし、公益的な開示の必要性等の種々の利益を衡量した上での「適正な遂行」と言えるものであることが求められる。

エ 「支障」の程度は名目的なものでは足りず実質的なものが要求される。また、「おそれ」の程度も単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性があると認められるかどうかにより判断する。

(2) 「監査、検査、取締り又は試験に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ」(情報公開条例第7条第7号ア)

ア 「監査」(主として監察的見地から、事務又は事業の執行又は財産の状況の正否を調べること。)、「検査」(法令の執行確保、会計経理の適正確保、物資の規格、等級の証明等のために帳簿書類その他の物件等を調べること。)、「取締り」(行政上の目的による一定の行為の禁止又は制限について適法又は適正な状態を確保すること。)及び「試験」(人の知識、能力等又は物の性能等を試すこと。)に係る事務は、いずれも事実を正確に把握し、その事実に基づいて評価又は判断を加えて、一定の決定を伴うことがあるものである。

イ これらの事務に関する情報の中には、例えば、監査等の対象、実施時期、調査事項等の詳細な情報、試験問題等のように、事前に公にすると、適正かつ公正な評価又は判断の前提となる事実の把握が困難となるもの、行政客体における法令違反行為又は法令違反に至らないまでも妥当性を欠く行為を助長し、又はこれらの行為を巧妙に行うことにより隠蔽をすることを容易にするおそれがあるものがあり、このような情報は、非開示とする。また、監査等の終了後であっても、例えば、違反事例等の詳細を公にすることにより、他の行政客体に法規制を免れる方法を示唆することになるものは、情報公開条例第7条第7号アに該当する。

(3) 「契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、国又は地方公共団体の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ」(情報公開条例第7条第7号イ)

ア 町の機関又は国の機関若しくは地方公共団体が一方の当事者となる契約、交渉又は争訟に係る事務においては、自己の意思により又は訴訟手続上、相手方と対等な立場で遂行する必要があり、当事者としての利益を保護する必要がある。

イ これらの契約、交渉又は争訟に係る事務に関する情報の中には、例えば、入札予定価格等を公にすることにより、公正な競争により形成されるべき適正な額での契約が困難になり財産上の利益が損なわれるものや、交渉、争訟等の対処方針等を公にすることにより、当事者として認められるべき地位を不当に害するおそれがあるものがあり、このような情報は、非開示とする。

(4) 「調査研究に係る事務に関し、その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ」(情報公開条例第7条第7号ウ)

ア 町の機関又は国の機関若しくは地方公共団体が行う調査研究の成果については、社会、国民等にあまねく還元することが原則であるが、成果を上げるためには、従事する職員が、その発想、創意工夫等を最大限に発揮できるようにすることも重要である。

イ 町の機関又は国の機関若しくは地方公共団体が行う調査研究に係る事務に関する情報の中には、例えば、①知的所有権に関する情報、調査研究の途中段階の情報等であって、一定の期日以前に公にすることにより成果を適正に広く国民に提供する目的を損ね、特定の者に不当な利益や不利益を及ぼすおそれがあるもの、②試行錯誤の段階の情報について公にすることにより、自由な発想、創意工夫や研究意欲が不当に妨げられ、減退するなど、能率的な遂行を不当に阻害するおそれがある場合があり、このような情報は非開示とする。

(5) 「人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ」(情報公開条例第7条第7号エ)

町の機関又は国の機関若しくは地方公共団体が行う人事管理(職員の任免、懲戒、給与、研修その他職員の身分、能力等の管理に関すること。)に係る事務については、当該機関の組織としての維持の観点から行われる一定の範囲で当該組織の独自性を有するものであり、人事管理に係る事務に関する情報の中には、例えば、勤務評価や、人事異動、昇格等の人事構想等を公にすることにより、公正かつ円滑な人事の確保が困難になるおそれがあるものがあり、このような情報は非開示とする。

(6) 「国又は地方公共団体が経営する企業に係る事業に関し、その企業経営上の正当な利益を害するおそれ」(情報公開条例第7条第7号オ)

町の機関又は国の機関若しくは地方公共団体が経営する企業(地方公営企業法(昭和27年法律第292号)第2条の適用を受ける企業をいう。)に係る事業については、企業経営という事業の性質上、その正当な利益を保護する必要があり、これを害するおそれがあるものは非開示とする。ただし、「企業経営上の正当な利益」の内容については、経営主体、事業の性格、内容等に応じて判断する必要があり、その範囲は、情報公開条例第7条第3号の法人等に関する情報と比べて、より狭いものとなる場合があり得ることに留意する。

第4 部分開示に関する判断基準

開示請求に係る公文書について、情報公開条例第8条に基づき部分開示をすべき場合に該当するかどうかの判断は、以下の基準により行う。

1 「開示請求に係る公文書に非開示情報が記録されている場合」とは、一件の公文書に複数の情報が記録されている場合に、各情報ごとに、情報公開条例第7条各号に規定する非開示情報に該当するかどうかを審査した結果、非開示情報に該当する情報がある場合を意味する。

開示請求は、公文書単位に行われるものであるため、情報公開条例第7条では公文書に全く非開示情報が記録されていない場合の開示義務が定められているが、情報公開条例第8条第1項の規定により、開示請求に係る公文書に非開示情報が記録されている場合に、部分的に開示できるか否かの判断を行わなければならない。

2 「容易に区分して除くことができるとき」

(1) 当該公文書のどの部分に非開示情報が記載されているかという記載部分の区分けが困難な場合だけではなく、区分けは容易であるがその部分の分離が技術的に困難な場合も、部分開示を行う義務はない。

「区分」とは、非開示情報が記録されている部分とそれ以外の部分とを概念上区分けすることを意味し、「除く」とは、非開示情報が記録されている部分を、当該部分の内容が分からないように墨塗り、被覆等を行い、公文書から物理的に除去することを意味する。

例えば、文章として記録されている内容そのものには非開示情報は含まれないが、特徴のある筆跡により特定の個人を識別することができる場合には、識別性のある部分を区分して除くことは困難である。また、録音されている発言内容自体には非開示情報が含まれていないとしても声により特定の個人を識別できる場合も同様である。

(2) 文書の記載の一部を除くことは、コピー機で作成したその複写物に墨を塗り再複写するなどして行うことができ、一般的には容易であると考えられる。なお、部分開示の作業に多くの時間・労力を要することは、直ちに、区分し、分離することが困難であるということにはならない。

一方、録音テープ、録画テープ、磁気ディスクに記録されたデータベース等の電磁的記録については、区分して除くことの容易性が問題となる。例えば、複数の人の発言が同時に録音されているがそのうち一部の発言内容のみに非開示情報が含まれている場合や、録画されている映像中に非開示情報が含まれている場合などでは、非開示情報部分のみを除去することが容易ではないことがあり得る。このような場合には、容易に区分して除くことができる範囲で、開示すべき部分を決定することになる。

なお、電磁的記録について、非開示部分と開示部分の分離が既存のプログラムでは行えない場合は、「容易に区分して除くことができないとき」に該当する。

3 「当該部分を除いた部分につき開示しなければならない。」

(1) 部分的に削除すべき範囲は、文書であれば、一般的には、文、段落等、表であれば個々の欄等を単位として判断することをもって足りる。

(2) 本項は、義務的に開示すべき範囲が定められているものであり、部分開示の実施に当たり、具体的な記述をどのように削除するかについては、行政機関の長の本法の目的に沿った合目的的な裁量に委ねられている。すなわち、非開示情報の記録部分の全体を完全に黒く塗るか、文字が判読できない程度に被覆するか、当該記録中の主要な部分だけ塗りつぶすかなどの方法の選択は、非開示情報を開示した結果とならない範囲内において、当該方法を講ずることの容易さ等を考慮して判断することとなる。その結果、観念的にはひとまとまりの非開示情報を構成する一部が開示されることになるとしても、実質的に非開示情報が開示されたと認められないのであれば、実施機関の非開示義務に反するものではない。

4 「有意の情報が記録されていないと認められるときは、この限りではない。」

(1) 「有意の情報が記録されていないと認められるとき」とは、非開示情報が記録されている部分を除いた残りの部分に記載されている情報の内容が、開示をしても意味がないと認められる場合を意味する。例えば、残りの部分に記載されている内容が、無意味な文字、数字等の羅列となる場合等である。

この「有意」性の判断に当たっては、同時に開示される他の情報があれば、これも併せて判断する。

(2) 「有意の情報」かどうかの判断は、請求の趣旨を損なうか否か、すなわち、開示請求者が知りたいと考える事柄との関連によって判断すべきものではなく、個々の請求者の意図によらず、客観的に決めるべきものである。

5 特定の個人を識別することができる情報が記録されている場合について(情報公開条例第8条第2項)

(1) 特定の個人を識別することができる情報について、氏名、生年月日その他の特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分を除くことにより、残りの部分を開示しても個人の権利利益の保護の観点から支障が生じないと認められるときは、当該残りの部分については、情報公開条例第7条第2号に規定する非開示情報には該当しないものとして取り扱う。したがって、当該部分は、他の非開示情報の規定に該当しない限り、情報公開条例第8条第1項の規定により開示することになる。

ただし、情報公開条例第8条第1項の規定を適用するに当たっては、容易に区分して除くことができるかどうかが要件となるので、特定の個人を識別することができることとなる部分とそれ以外の部分とを容易に区分して除くことができない場合は、当該個人に関する情報は全体として非開示とする。

なお、氏名、生年月日その他の特定の個人を識別することができることとなる部分は、情報公開条例第7条第2号アからまでのいずれかの規定に該当しない限り、部分開示の対象とならない。

(2) 特定の個人を識別することができることとなる部分を除くことにより誰に関する情報であるかが分からなくなれば、残りの部分については、通常、個人に関する情報としての保護の必要性は乏しくなるが、当該部分を除いても、開示することが不適当であると認められるものもある。例えば、カルテ、作文等個人の人格と密接に関連する情報が記録された公文書、個人の未公表の研究論文等、特定の個人を識別させる部分を除いても開示することが不適当であると認められるものは、非開示とする。

(3) なお、個人に関する情報であっても、「特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」(情報公開条例第7条第2号)については、情報公開条例第8条第2項の規定の適用はない。

第5 公益上の理由による裁量的開示に関する判断基準

公益上の理由による裁量的開示(情報公開条例第9条)を行うかどうかの判断は、以下の基準により行う。

1 「公益上特に必要があると認めるとき」とは、情報公開条例第7条各号の非開示情報の規定に該当する情報であるが、実施機関の高度の行政的な判断により、公にすることに、当該保護すべき利益を上回る公益上の必要性があると認められる場合を意味する。

情報公開条例第7条各号においても、第2号イ第3号ただし書等、当該規定により保護する利益と当該情報を公にすることの公益上の必要性との比較衡量が行われる場合があるが、情報公開条例第9条では、情報公開条例第7条の規定を適用した場合に非開示となる場合であっても、なお公にすることに公益上の必要性があると認められる場合には、開示することができるとするものである。

2 本条の規定は、「公益上特に必要があると認めるとき」との規定からも、非開示情報を開示するという処分の性質からも明らかなとおり、公益上の必要性の認定についての実施機関の要件裁量を認めるものである。

第6 公文書の存否に関する情報に関する判断基準

開示請求に対し、公文書の存否を明らかにしないで当該開示請求を拒否すべき場合(情報公開条例第10条)に該当するかどうかの判断は、以下の基準により行う。

1 「開示請求に係る公文書が存在しているか否かを答えるだけで、非開示情報を開示することとなるとき」とは、開示請求に係る公文書が具体的にあるかないかにかかわらず、開示請求された公文書の存否について回答すれば、非開示情報を開示することとなる場合をいう。

なお、存否を明らかにしないで拒否することが必要な類型の情報については、常に存否を明らかにしないで拒否することが必要であることに留意する。

2 開示請求に含まれる情報と非開示情報該当性とが結合することにより、当該公文書の存否を回答できない場合がある。例えば、特定の個人の名を挙げて、その病歴情報が記録された公文書の開示請求が行われた場合、当該公文書に記録されている情報は非開示情報に該当するので非開示であると回答するだけで、当該個人の病歴の存在が明らかになることになる。このような特定の者又は特定の事項を名指しした探索的請求は、情報公開条例第7条各号の非開示情報の類型全てについて生じ得る。

具体的には、次のような例は、本条の規定を適用することとする。

① 特定の個人の病歴に関する情報(情報公開条例第7条第2号関係)

② 先端技術に関する特定企業の設備投資計画に関する情報(情報公開条例第7条第3号関係)

③ 犯罪の内偵捜査に関する情報(情報公開条例第7条第4号関係)

④ 住民生活に重大な影響を及ぼすおそれのある特定の政策決定の検討状況の情報(情報公開条例第7条第6号関係)

⑤ 特定分野に限定しての試験問題の出題予定に関する情報(情報公開条例第7条第7号関係)

長与町情報公開条例に基づく処分に係る審査基準

令和6年8月30日 策定

(令和6年8月30日施行)

体系情報
第3編 執行機関/第1章 長/第4節 情報の公開・保護等
沿革情報
令和6年8月30日 策定